今年もやって来た、金木犀の香りが漂う穏やかな秋。澄み切った青空の下、私はいつものように公園へと足を運んだ。ベンチに腰掛け、本を読みながら午後のひとときを過ごしていると、視界の端に何かが動くのが見えた。
それは、生後数か月と思われる小さな猫だった。まだふっくらとした体つきで、縞模様の毛並みが太陽の光に輝いている。どうやら、落ち葉の山に足を踏み入れてしまったようで、小さな体でバタバタと悪戦苦闘している。
最初はただ見ているだけだったのだが、猫が段々とパニックになっているように見えたので、つい声をかけてしまった。「大丈夫だよ、ちょっと待ってね」そう言うと、猫は私の声に顔を上げ、大きな瞳でこちらを見上げてきた。警戒しているのか、それとも助けを求めているのか、その瞳は複雑な感情を映し出していた。
おそるおそる近づき、猫を落ち葉の中から救い出した。すると、猫は私の手を甘噛みしながら、くるくると私の周りを駆け回る。まるで、私に感謝しているかのように。しばらく一緒に遊んでから、猫は満足そうに私の膝の上で眠り始めた。
秋の穏やかな午後、思いがけない出会いに心が温まった。小さな猫との触れ合いは、私にとって忘れられない思い出となった。