ADHDの人は、その特性から、物事を後回しにしてしまう傾向が強いと言われています。この傾向が生まれる背景には、いくつかの要因が考えられます。
1. 実行機能の弱さ
ADHDの人の多くは、実行機能と呼ばれる脳の機能が弱いとされています。実行機能は、計画を立てたり、タスクを遂行したり、衝動を抑えたりする上で重要な働きを担っています。この機能が弱いことで、
- 計画を立てるのが難しい: 全体像を把握し、具体的なステップを立てることが苦手です。
- タスクを開始するのが難しい: やる気が出なかったり、どこから手をつければいいのかわからなかったりします。
- 途中で集中力が途切れる: 他のことに気が散りやすく、一つのことに集中するのが難しいです。
といったことが起こり、結果的に物事を後回しにしてしまうことがあります。
2. 興味の対象が頻繁に変わる
ADHDの人は、興味の対象が頻繁に変わるという特徴があります。あることに集中していたとしても、別の興味深いものを見つけると、そちらに気持ちが移ってしまうことがあります。そのため、一度始めた作業を最後までやり遂げることが難しく、結果的に後回しになってしまうのです。
3. 報酬系の遅延耐性の低さ
ADHDの人は、即座の報酬を求める傾向が強いと言われています。例えば、目の前の楽しいことにすぐに飛びついてしまい、将来の目標のために努力することが苦手です。そのため、面倒な作業や、すぐに結果が出ない作業は後回しにしてしまうのです。
4. 失敗への恐れ
ADHDの人は、失敗を恐れる傾向が強い人もいます。完璧主義な傾向が強く、少しでも失敗するかもしれないと思うと、行動に移すことを躊躇してしまうのです。結果的に、何もできずに時間が過ぎてしまい、後回しになってしまうことがあります。
5. 環境要因
ADHDの特性に加えて、環境要因も後回しにする行動に影響を与えます。例えば、
- 周囲の理解不足: ADHDの特性を理解してもらえず、周囲からプレッシャーを感じてしまう。
- 過度な期待: 自分に過度な期待をかけてしまい、それを達成できないことに焦りを感じてしまう。
- 不適切な環境: 集中できないような騒がしい環境で作業をしなければならない。
といった状況は、ADHDの人の困難さを増幅させ、後回しにする行動を助長してしまう可能性があります。
まとめ
ADHDの人が物事を後回しにしてしまう理由は、一概に特定することはできません。実行機能の弱さ、興味の対象の変動、報酬系の遅延耐性の低さ、失敗への恐れ、そして環境要因など、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
ADHDの特性を理解し、個々の状況に合わせて適切な対策を講じることで、後回しにする傾向を改善することができます。 例えば、
- タスクを小さなステップに分割する
- タイマーを使って時間を区切る
- 集中できる環境を整える
- 報酬システムを取り入れる
- 周囲の人と協力する
といった対策が考えられます。
もし、ご自身がADHDの特性に悩んでいると感じたら、専門家への相談も検討してみてはいかがでしょうか。